ダーガーの絵は大家に「託された」のか

今、原美術館でやってるダーガー展(今度の月曜まで)について。

ダーガーの作品を彼の死後、世の中に発表したネイサン(家主でもあった)を紹介する一室のキャプションの中に、「ダーガーが自分の作品を託した・・・」というような記述があった。これは字数やパネルのサイズなど、展示上の都合を考えても適切な紹介ではない。

http://www.add-info.com/mt/archives/001323.php

原美術館のウェブサイトを見てみると

……完全な孤独の中で、膨大な量の物語と絵画を制作しました。人目に触れることもなく描きためられた作品群は、家主であり、自身も芸術家としてシカゴにおけるニューバウハウスの中心的存在の一人であったネイサンラーナーに託され、その慧眼により、没後の損失を免れることになります

http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html

確かに「託され」と書いてある。

(関係ないけど「慧眼」(けいがん)が読めなくて思わず調べてしまった。恥ずかしい)

俺今回の原美術館のダーガー展には行ってないんだけど、(7月16日(月曜日)まで) 2003年のワタリウム美術館の展覧会は見に行った。

ワタリウムのウェブサイトにはこう書いてある

身寄りのない81歳の老人が息を引き取った。彼が40年来住んでいたアパートの部屋には訪ねてくる人もいなかったという。アパートの大家は、老人の遺品を処分しようと、この雑然とした部屋に足を踏み入れ、大変なものを発見する。

watari-um - exhibition -

確かこれ読んで

「なんだよ、勝手に持ち出したのかよ!」

と、ちょっと理不尽な感じがしたのを覚えている。でもまあ、身寄りのない独居老人が賃貸住宅で亡くなったら遺品の整理は大家の仕事だろうから、(日本では遺品の法的な所有権はどうなるんだろう?) 絵を持ち出すのはしょうがない。

なんか気に触ったのは、こういうの。

余談であるが彼は生涯童貞であったのではないかともいわれている。

http://kotaka766.exblog.jp/1912807

記憶が間違ってなければ、確か、これと同じ内容の解説をワタリウム美術館で見て、「勝手に持ち出すのはしょうがないとしても、こんな言われ方されたら嫌だろうなー」っと、思ってしまった。

これも絵の解釈の話だから、しょうがないのかなあ。

でも、この人、これだけじゃなくて他にも結構色々言われている。

In our age of overprotective parenting, it is easy to see this as evidence that Darger was some sort of potential pedophile or murderer who fortunately found a release for his dark impulses through his art.

http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/fa20070426a1.html

潜在的な小児(性)愛者」もしくは「殺人者」

変な絵書いたからって、「潜在的殺人者」っていうのはねー

it should be pointed out that some have theorized that he was a child molester, and others have suggested that he may have murdered a girl shortly after his escape from the orphanage. There is no solid evidence to support these theories, though

http://search.japantimes.co.jp/member/member.html?fa20021204md.htm

「痴漢」「孤児院から脱走するときに少女を殺したのではないか?」(但し証拠はない)

証拠もないのに絵見ただけでいい加減なこというなよなー (Wikipediaの記述を読むと、絵見ただけってことでもないようだけど)

絵が発見される経緯も、ワタリウムの解説では死後、遺品整理のときに発見されたかのような文章だけど、

老人用養護施設に入る前に、大家のネイサン・ラーナーに「自分の部屋の物は好きにしてくれ」と頼みます。大家がゴミ屋敷の様なダーガーの部屋で発見したのが15冊を超える奇妙な物語と、数百枚のその挿絵だったらしいです。

http://blog.so-net.ne.jp/kurohani/2007-04-23

……と書いてあるのもある。

でも、斉藤環の本にはこうかいてあるとのこと。

ダーガーはあきらかに、ひどくショックを受けていた。彼はしばらく沈黙した後、ようやく重い口を開いた。「もう手遅れだ。話したくない」。それはまるで心に痛手を受けた人のようだった。そして彼は、はっきりした口調でつけ加えた。「(作品は)全部捨ててくれ」。

http://www.add-info.com/mt/archives/001323.php

なんかちょっと不幸な感じだ。かわいそう。

とにかくほんとに「託した」のかどうか、はっきりしてほしいもんだ。原美術館