TWS-Emerging展・トーキョーワンダーサイト本郷

「四男のステンドグラス」で有名な、トーキョーワンダーサイト本郷で開かれている展覧会、TWS-Emerging展。9月29日に行われた「オープニングトーク」(作家による作品紹介・解説)に行ってきた。

この展覧会では、3フロアある展示空間で、若手のアーティストを3人、ひとり1フロアずつ使って紹介している。

まず、笹井信吾さん、多摩美在学中。

吉岡雅哉さん、2006年のシェル美術賞の審査員奨励賞を受賞された方。(代官山では福島さんの横に展示されてたような気が)

それと「はてなー」でもある森裕子さんの三人。

トークでは、ひとり20分ぐらいずつ、それぞれの展示フロアで自分の作品について紹介。質疑応答などが行われた。みなさんそれぞれ「自由に描きたいものを描く、描きたいものしか描けない」のだ、と共通して言っていたのが面白かった。

なかでも興味深かったのが、吉岡雅哉さんのトークと作品。話していた内容はここに書いてあるのとほぼ同じだった。

去年、代官山のシェル美術賞の作品を見たときには、イケムラレイコっぽい、光を描いた絵を描こうとしたのかと思ってたのだが、そうではなく、このかたは「コンビニ」に関心を持っていて、コンビニの絵を多く描かれている方なのであった。

展示作品の 4分の3 くらいはコンビニの絵。それも油彩、アクリル、ペン(かな?)によるドローイングと、色々な手法でコンビニの絵を描いている。(ファミマ、ローソン、セブンイレブン、サークル K サンクスが描かれていたが am/pm が一枚も無かったのはなぜだろう)

で、残りの 4分の1 くらいは、暗い部屋でテレビを見ている人の絵、人が死んでいる絵など。

俺の解釈を言わせてもらえば、多くのお客がすれちがうコンビニ、夜中に一人で見るテレビ、それに「死」、とくれば、これは「現代の孤独」がテーマなのかな、という気がしてくる。

Edward HopperのNight Hawksという絵はアメリカで1940年代に描かれた絵らしいが、それに通ずる孤独感ではないだろうか。

ところが、会場での吉岡さんのトークはそういう話ではなかった。

……現代の建造物に注目するとたとえば、コンビニやホームセンターなどがあげられる。私はこれらの存在を現代の病理としてとらえる。

……ここ最近、異常に増加しているこれらの存在は……確実に日本の景観を損ねている。商業主義や競争原理に支配された日常になかば思考停止状態にいる私たちは……危機意識を持つべきではないか。

http://www.tokyo-ws.org/hongo/20070927/01/01.html

コンビニってのは現代の病理だろうか? コンビニを便利だとありがたがってる、俺のようなお客たち( = 社会)の病理を映し出したものがコンビニ……なのかもしれない。

お話の中には「社会と個」とか「孤独」とかいう言葉は全くでてこなかった。それが逆に興味深い。展示されていた作品の中には、昼間のコンビニの絵もあったが(背景にさくらが咲いていた)、その作品では、コンビニの店頭に小学生のような子供と、愛し合っている全裸の男女も描かれていた。

コンビニの店舗数が増えたのと、社会の核家族化や晩婚化は関係あるだろうか? 見れば見るほど社会の中で分離・隔離された個のつながりについて考えさせられる。

Edward Hopperも、以下のように述べているらしいが、

Although Hopper denied that he purposely infused any of his paintings with symbols of isolation and emptiness, he acknowledged of Nighthawks that, 'unconsciously, probably, I was painting the loneliness of a large city.'

Hopperは、孤独や空虚さを表現することを意図して描いたのではないと否定するが、作品Nighthawksでは「おそらく無意識のうちに大都市の孤独を描いたのだろう」と認める。

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結構、本人の潜在意識にあるものが気づかぬうちに描かれたりすることもあるのだろう。俺は「病理」という言葉にはあまりぴんと来ないが、その言葉にこめられているのは社会の変化であり、「二十一世紀の孤独」というようなものなのではないだろうか。(病、ですかね?)

この吉岡さんの作品が2階。1階の笹井さんの絵は、緩い感じの絵に小さな生き物がうろついてる絵。今風。3階の森さんの絵はあいかわらず「おいしそう」な、お菓子のような世界が和みます。(お菓子の絵じゃないそうですが) 描かれた人物がお洒落な感じ。

しかしあれだ。見にきていた方で、コメントがことごとく的外れだった面白いお兄さんがいたけど、あれは誰だったんだろう。(ひょっとして有名な方?) あれは司会進行の問題。急に話を振られて困っていただろうなーあの人。

※明日、10月2日(火曜日)は休館らしいのでご注意を。

吉岡雅哉 + 笹井信吾 + 森裕子 展
会場: トーキョーワンダーサイト・本郷
スケジュール: 2007年09月29日 〜 2007年10月21日
住所: 〒113-0033 東京都文京区本郷2-4-16
電話: 03-5689-5331 ファクス: 03-5689-7501