ゴス展・横浜美術館

ゴスっていうのは、「ゴスロリ」のゴス、「ゴシック」を日本語のように略した言葉……かと思ったらそうではなかった。 もともと"Goth"とはゴート人のこと。goth-icで「ゴート人っぽい」が原義ではないだろうか。といっても、この展覧会で言う「ゴス」はゴート人という意味では(もちろん)なく、これは19世紀のゴシック小説の世界観に影響を受けた80年代のサブカルチャー "Goth subculture"に染まってる人(←なぜかこのWikipediaの項は日本語版が無い) 、というような意味だろうか。

はっきりいって、あまり興味の無い分野だったので、全く期待せずに見に行ったのだが、なかなか面白かった。

なかでも興味深かったのが Dr. Lakra。メキシコ人のアーティストで刺青の彫師もやってるらしい。

古い写真などの上から色々描いていく作品。刺青っぽい模様だけでなく、いろんなものが描かれている。

見にいきたかったな、オープンスタジオ。他にもこんな感じの大きなイラスト(これは展示されてたのとは違いますが)や、立体作品などもあった。展示されている大きなイラストは(多分)日本で制作したものだと思うけど、なかなか良い雰囲気であった。

また、ピュ〜ぴる (http://www.pyuupiru.com/ )の作品もとても興味深い。(2005年の横浜トリエンナーレにもでていたかたらしい)

男性から女性、モンスターから完全なる自分へと変貌を遂げる軌跡を、ポートレートと立体作品、パフォーマンスにより表現。(トーク:1/26、パフォーマンス:3/22)

http://jiu.ac.jp/yma/goth/artist5.html

展示されているのはご本人のブログによると、

新作の立体と未発表ポートレイト38枚からなる連作

http://pyuupiru.seesaa.net/article/74592491.html

……とのこと。文字通りの「力作」。圧倒された。 体の痛みや、社会とのかかわりのなかで感じ続けた違和感・摩擦など、いろんな思いがこもっているんだろうけど、「ゴス・カルチャー」的にみると、ある種(?)の耽美主義的なこだわりのようなものすら感じられるポートレイトの連作。

狭義のゴシックファッションなど、「ゴス的」なものがみられるのは吉永マサユキの写真だけで、あとは概念的に拡大解釈すると「ゴス的なのかなあ?」といった感じの作品が多かった。ゴスファッションマニア向けの展覧会ではない、と思う。

ファッション・文化全般に興味があって、「ゴスってなんだろー」と考えながら見ることができる人なら誰でも楽しめるのではないだろうか。(男性器が写ってる作品があったりするので、そういうので気まずい思いをしない人ならば、という限定つきだけど)

ゴス展 GOTH : Reality of the Departed World | 横浜美術館 YOKOHAMA MUSEUM OF ART

追記: いつもid:ogawamaさんのはてブ経由で楽しく読ませてもらっている「徒然と(美術と本と映画好き...)」さんのエントリーが面白かった。

一見して「テーマに沿ってるのかどうかよくわからない」展示が多いので意味不明だと感じるかたも多いと思う。あと俺が行ったときにはさすがに図録の確認はなく、かわりに確か「性的な表現があるけど大丈夫か?」といった質問をされた。寝袋の彫刻は……束芋氏はゴスロリのポートレイトを観て、「内臓が身体の表面に出てきている」と話したらしいが、拡大解釈するとそういったものとの類推が考えられる……のかもしれない。(俺もナンジャコリャと思ったけど)

参考: 【現代アートクルーズ】自己表現を追求する現代の「ゴス」- MSN産経ニュース

企画した木村絵理子学芸員は、中世から脈々と受け継がれる「死を想う美術」の系譜に「ゴス」を位置づけ、「死を想うことは生きる意味を見つめることだ」と説く。(中略) また「ゴス」は、世の中の保守的な趨勢(すうせい)からは排除されてしまうもの、合理的発想では割り切れないものを包み込む。とはいえ、現代の「ゴス」は、ガチガチの社会に影響を与えるというよりは、ひたすら「自己」に向かっているようだ。特に身体改造を扱う表現が多い。

http://sankei.jp.msn.com/culture/arts/080109/art0801091609001-n1.htm

「ゴス」展
会場: 横浜美術館
スケジュール: 2007年12月22日 〜 2008年03月26日
休館日: 木曜日(1月3日、3月20日は開館)、12月29日〜1月1日、3月21日
住所: 〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
電話: 045-221-0300 ファクス: 045-221-0317