"The Art of Requirements Triage" (要求トリアージの技芸)

いまさらって感じもするけど、トリアージ関連の話。

参考: おおもとの福耳さんのエントリ ケーキ - 福耳コラム

拝見して、正直あまり良い印象は受けなかったが、その一方でいろんな方が、いろんな方向に話題を膨らませて論じてくれて、そういったものはとても面白かった。

なかでも、上野の芸大美術館でやってる「バウハウス展」と関連付けて論じられていた方のエントリが興味深かった。

平和な日常における「トリアージの代わりになる資源の最適配分方法」・・・産業革命以来の日々の産業活動というのは、まんまその命題のもとに進歩してきたと思っていたんだけど。

「安く、大量に作れて、しかも美しいものを」と爆走してきた工業製品開発を、この先も暴走させ続けても良いのか?という疑問もありはするのだけど、「お前らはトリアージのお陰でこんな豊かな生活ができてるんじゃないのか」という問いに対しては、はっきりNoと言える。

平和な日常での「トリアージ」に代わる解 - しんたろサンの日記

この展覧会、デザイン系だし、椅子とかが並んでるだけだったら、あんなり面白くなさそうだし、行かなくてもいいか……と思っていたんだけど、こちらのエントリを拝見して行ってみようか、という気になってきた。

「BAUHAUS experience, dessau」展
会場: 東京藝術大学 大学美術館・陳列館
スケジュール: 2008年04月26日 〜 2008年07月21日
5月5日(月)、7月21日(月)は開館。5月7日(水)は閉館
住所: 〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
電話: 03-5685-7755


で、この展覧会の話は別にいいんだけど、この話を拝見して、ふと、「トリアージとアートの間にはなにか関係があるだろうか?」 と思い、色々検索してみたところ、アート関連の情報はみつけられなかったが、それとは別に面白いものを見つけることができた。

トリアージ関連の一連の話で、これを取り上げられている方がみあたらなかったので(俺が見落としているだけかもしれないけど)ちょっとメモしておくことにする。


IEEEのジャーナル(だと思う)の、「Computer」、2003年に掲載された論文のアブスト(要約)

The Art of Requirements Triage (要求トリアージの技芸、といった感じだと思う)

Driven by an increasingly competitive market, companies add features and compress schedules for the delivery of every product, often creating a complete mismatch of requirements and resources that results in products failing to satisfy customer needs.Medical personnel must deal with similar considerations when treating disaster victims―a practice dubbed triage. They systematically categorize victims into those who will die whether treated or not, those who will resume normal lives whether treated or not, and those for whom medical treatment may make a significant difference. Determining what requirements a product will satisfy can benefit from a similar triage process.

競争が激化する中で、企業は製品に機能を加え、出荷までのスケジュールを圧縮してきたが、その結果として、しばしば製品に対する要求とそれを提供する資源との完全なミスマッチが発生し、その結果、消費者のニーズを満たすことができない製品を作り出してきた。医療関係者は災害の被災者を治療するにあたって似たような問題を考慮しなくてはならない - これはトリアージと呼ばれる。組織的に規則正しく被災者をカテゴライズし、治療するかしないかにかかわらず死亡すると見込まれる者、治療の有無にかかわらず回復すると見込まれる者、それと、治療を行うことで大きな効果が期待できる者に分類する。製品がどのような要求を満たすか決定するにあたっても、似たようなトリアージプロセスを役立てることができる。(やや意訳ぎみ)

CSDL | IEEE Computer Society

んで、この著者が、

Alan M. Davis, University of Colorado at Colorado Springs

となっている。

この、Alan M. Davisという名前。あーれ、この名前どっかで見たなあ、と思って検索してみたら、

SE向けの本書いてる先生ですね。(本屋でみたことがあった)

成功する要求仕様 失敗する要求仕様

成功する要求仕様 失敗する要求仕様

さらに色々調べてみると、IT関連では結構使われる言葉のようで、著者は別だが「デスマーチ」という本でも言及されている様子。(この本も本屋でよく見るけど、知らなかった)

デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか

デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか

著者が「この本でひとつだけ覚えるとしたらこれ」といっているのが、『トリアージ』です。トリアージとは、戦争や災害における医療現場で、患者の緊急度をレベル分けして、それぞれに対して必要に応じた医療を施していく、ということです。言葉を換えると、「場合によっては見捨てるべきものは見捨てる」ということになります。

ソフトウェア開発の場合では要求の取捨選択がこれにあたり、デスマーチ化したプロジェクトでは当初想定していたすべての要求を実装することをあきらめ、どうしても必要な要求だけを実装するという方針に切り替えることが効果的である、と書かれています。

http://www.yusukeoi.net/archives/2007/01/death_march.html

あまりプラクティカルな本ではないみたいだけど。

つまりこの話、俺も、このように↓読んでいたのだけど、

1. 「競争に負けたらかわいそう」
2. それだけじゃ経営学の話にならないことを説明してもわかってくれない
3. ならば選択を強いる極北の例として、トリアージでわかりやすく解説だ!

自分は違う構図を見ているような気がしてきた - novtan別館

「わかりやすく解説するために」トリアージを持ち出した、というより、実は、福耳先生の専門領域でよく使われるたとえ話なので、思い出しやすかったので例として用いた、って感じだったりするのでしょうかね。

でもこれ、商品企画のたとえ話なら良いけど、福祉に応用したらいわゆる「姥捨て山」の発想になりませんかね?

結局、「わかりやすく解説するため」にどうするのが最適か、というのが二の次になってしまっていたような印象を受けてしまいます。