持ち家 or 借家

サラリーマンは安い給料でこき使われ、いつクビになるか分からない「ハイリスク・ローリターン」の哀れな職業である。それなのにいまだにマイホームを買おうとするバカが多いのには呆れる。

 雨露さえ凌げればマイホームであれ、アパート住まいであれ、変わるところはない。

http://d.hatena.ne.jp/hana-ichi/20061015

いろんなファクターが絡んでると思うが

社会の問題

  • 昔の日本の家は木造が多かった (ヨーロッパの石の家はいくら古くなっても機能する)
  • 60年前、日本はアメリカと戦争していた。(東京が空襲されて死者10万人、まっさらに)
  • これから日本の人口はどんどん減っていく (家があまる?)
  • 雇用が流動化して将来の収入が保証されない社会になる(もしくは、すでにそうなっている)
  • 地震等の自然災害のリスク

要するに将来の予測が難しい。

今買った家は、30年後、築30年でぼろぼろ、全く価値の無いものになっている「恐れ」が強い、と。

これが、60年たっても全然キレイで、住むのに困らなかったら話が全然違ってくる。(建物部分の資産価値がゼロでも住むのに困らなければ用は足りる)

ところが「どんな家を建てると60年持つか」ってノウハウが日本には無い。(伊勢神宮みたいに建て替えが前提の文化?) なので、今建てた家がどうなるか、正確な予測は難しい(もちろん構造によるが)

借家派の「ローン終わった頃には家はぼろぼろ」っていうのは、「持ち家がないと不安だ」というのと同種の「恐怖感」にすぎない。

(築50年以上の鉄筋コンクリート建築物ってのは、実は探せば日本にも色々実例はある(あった)わけだけど。21世紀に作る建物の寿命はそれより短いだろうか? (短いかもしれないし、長いかもしれない))

個人の問題

  • だんなは長男か、次男か、実家がどこにあるのか(そもそも実家があるのかどうか)
  • ていうか、そういう家族制度に依拠して生きていくのか、いかないのか
  • 生まれ育った土地で暮らしているのか、別の場所に生活の拠点を移しているのかどうか (将来どこに住むつもりか)
  • 壁に穴を開けて釘を刺して絵をかけたいかどうか (誰にも断らずに)

「持ち家 or 借家論争」の時に、

「僕は家なんか買いませんよ、いざとなったら実家が広いんでそこで親と同居しますし」

なんて言ったら、はったおされると思うが。

だから、自分が「借家派」だという人の話は、親の家がどうなってるのかについて言及がないと全然説得力を感じない。(まあ、常識的に考えて、親の家も借家なんだろうな、と想像するが)

「実家 = 子供が帰ってくる場所」つまり、女性が持ち家にこだわるのは子供が帰ってくる場所を保証しようとしている、ということではないのだろうか。

パンローリングっていう投資関係の出版社が出している「デービス王朝」っていう本があって、本自体は、どちらかというとつまらないんだけど、その本で紹介されている「デービス王朝」ってのが面白くて、これは親子三代かけて富を築いた富豪の一家「デービス家」のこと。

デービス王朝 知られざる偉大な投資家一族 (ウィザードブックシリーズ)

デービス王朝 知られざる偉大な投資家一族 (ウィザードブックシリーズ)

まあ要するに、ある家族に「家幻想」があって、家族のあいだでその価値観を共有していたとする。

ここでの「家」ってのは住居のことではなくて、ファミリーのこと。

例えば、「山田家」の構成員は、全員一丸となって「山田家」の資産を増やすように努力すると。

それを三代続けるとどうなるかっていうと、山田家はたくさん資産を蓄えられているかもしれない。(うまくいかないかもしれないけど)

自営業やってる家は、今でもこういう思想だと思うけど。

この「家」ってのが「会社」になって、厚生年金で生活を保障してもらうというのが会社員で、つまり会社には「代々続く山田家の機能」の一部が託されている。それなのに雇用が保証されないんじゃ困るって話で。

(ファミリービジネスだったら努力の結果は自分・自分の子孫にかえってくると。一方、会社員の努力の結果は誰の手元に行くかというと……)

要するに冒頭の持ち家の話ってのは、核家族の人が会社制度に依拠して生きていこうとしても、そもそも雇用が保証されないんじゃ、ローンで家買っても困るよね、という話なわけ。

つまり、結論としては、

会社制度を信用して生きていける立場の人が、躯体の寿命が60年ぐらいの丈夫な家をローンで買うのは(融資条件にもよるけど)「OK」

立派な実家がある家の子供が都会の借家で暮らすのも「OK」

家族制度も会社も頼れない人は、ローンも借家も「危険」 これは家の話でも、ローンの話でもない。

そういえば、だいぶまえ、ある人から聞いたんだけど、ヨーロッパの建設会社の技術ってのはかなり凄いらしい。日本の建設会社の技術より全然凄いらしい。

その話を聞いた時はぴんとこなかったけど、考えてみればあたりまえだ。日本では客のほうが「家を建ててもすぐぼろぼろになる」と思い込んでるんだから、たてるほうもいい加減なんだろう。一方、ヨーロッパじゃ、建てて50年ぐらいの家がぼろぼろになってたらクレームもんだろうし。