石原都知事の発言を批判している人は1500円払って展覧会を見ているのだろうか?

東京都現代美術館のカルティエ現代美術財団コレクション展に関して

オープニングのレセプションでスピーチした石原都知事の発言がフランスの新聞で批判されたことについて。

この発言に関しては、 「 石原都知事を全面擁護するわけではないのですが。 」や、弐代目・青い日記帳さんなどでも紹介されている。

んで。別に1500円払ってなくてもいいんだけど。展覧会を見た上での石原批判なのか?

(※ちょっと追記: 俺はリベラシオンの記事を批判しているのではなくて、その記事を読んだ人が、展覧会を見た上で石原批判をするなら (もしくは、展覧会を見ていなくても出品作家の知識があって「理解」しているなら) 「今回出品されている、だれそれの作品○×は、かくかくしかじかで重要な意味を持つ作品なのにそれを理解できない石原は……」といった文脈で批判をしないのは「なぜなのか」が疑問なんです。

リベラシオンの記者は当然展覧会を見てるんだろうし作家の理解もあった上で批判しているんでしょうから、それは理解できます。石原批判をすると(宗教画とか芸術一般ではなく)今回の展覧会の出品作品を「理解」しているように俺には見えるんですが、間違いないですか? ということです。

後半、俺が理解できなかった作品ワースト3を挙げていますが、それも、理解できなかったから腹を立てているのではなくて、リベラシオンの記事を読んで石原批判をしている人は、これらの作品も理解したうえで批判しているのですか、という意味で例示したものです)

たとえばこんなの。

石原の芸術放言はこれ↓

東京都知事、現代美術を腹にすえかね

http://www7a.biglobe.ne.jp/~mcpmt/Liberation20060424.html

ここぞとばかりに彼が述べるところによれば、「見る者に説明を要する現代美術というのは無に等しい。」そして、最後のとどめのように、「日本の文化は西洋文化よりもよほど美しい。」会場内には衝撃が走った。

石原の芸術への無理解はヒトラーのそれに通じるというか、薄ら寒くなる。

http://d.hatena.ne.jp/antonian/20060501/1146429402

芸術一般への無理解ではなくて、この展覧会に展示されていた作品に関しての話だと思うんです。東京都ではそれなりに芸術振興もやっていて、現代美術系も当然、対象に入ってます。

恥さらし石原珍太郎、現代美術がわからないことを露呈

らしいですよ、奥さん。東京都現代美術館で「カルチエ財団所蔵現代美術コレクション」が始まるのですが、そのレセプションで石原慎太郎閣下が妄言を炸裂させたようですね。

……アーティストだろうがなんだろうが、一首長として誤解がないように振る舞わなければいけない場面というものがあります。

http://d.hatena.ne.jp/buyobuyo/20060501

カルティエ財団に来てもらった美術館の責任者の発言としては確かにおかしい。(責任者の責任者というべきか?) お友達の氏家館長もきまずかったかもしれない。

ですが、心にもないおべんちゃらを言ってその場をごまかして済ませられるレベルじゃないと彼は感じたんだと思いますよ。

批判ではなく罵倒しかできないガキのようなオッサン。追記:的確な批判ならパフォーマンスになりえたけど、単に個人的な好き嫌いを述べただけの低レベルの罵倒でしかない。ガキ。

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www7a.biglobe.ne.jp/~mcpmt/Liberation20060424.html

これはさすがに見に行ったうえでの発言だと思いますが、(見ていないのなら、批判か罵倒かは判断が付かないはずなので)

見た上で「批判ではなく罵倒だ」と言い切るなら、世界が狭いというか、ああいうのを理解できない人がいるのは当然だと思うんですが。

「たのしかった・面白かった」レベルの感想や、デートや暇つぶしとしてどうなのか、といった見方じゃなくて、1500円払ってわざわざ見に行くだけの「価値」がある展覧会か、と考えると、この展覧会は結構微妙だと感じました。

あくまで「わかってる人」対象で、価値を理解できるのは一部の人に限られるのではないかと感じました。そういう意味で、石原都知事の批判にはそれほど違和感を感じませんでした。

個人的には平面系は森山大道とかもあったし、1500円分楽しめましたが、立体系は正直、首をかしげるものが多かったです。個人的に感じたワースト3 を以下に挙げます。

ワースト1 マーク・ニューソンの飛行機

これって、美しいんですか? と白けてしまった飛行機の作品。説明を聞けば理解できるんだろうか?? 「空を飛ぶ金属の塊」の質感を抽象的に表現するなら、もっと、美しく作ったら、という感じ。中村哲也みたいに綺麗なものならわかるんだけど。コウモリの干物のような無様な飛行機にしか見えなかった。

( http://www.withoutgas.com/blog/archives/2006/04/post_251.html )

表にある、パナマレンコの潜水艦も、どうかな、と思ったけど、これはまあ、かわいいし、楽しいからいいか。という感じ。潜水艦って、冷静に考えると結構情けない乗り物だと思うけど(沈没しながら進んでくし、故障するとホントに沈没して浮上できないし) そういう情けなさの表現としては楽しいと思ったが。価値がある芸術かというと「?」

2位 トニー・アウスラーの目玉

直径1メートルぐらいの白い玉にプロジェクターで目玉の映像を投影した作品。これ見て思ったのは、日本だと、銀座のショーウィンドーとか、デパートのマネキンとか、テーマパークとか、商業系の立体表現って、かなり洗練されてるんじゃないかな、と。(優秀な人がたくさん入ってそうだし、クライアントもシビアだろうし) そういうのを見慣れた眼で見ると、なんか、この目玉は技術的に少しお粗末なんじゃないかな、と思えてくる。1500円かー、みたいな。

(追記: これかな http://www.paris-art.com/image_detail-12913.html )

3位 ロン・ミュエクの巨大女

これは都知事が「説明聞かなきゃわかんない」と言った作品ですが、俺も説明読むまで理解できませんでした。これはふたつの理由があります。ひとつは、少し大きすぎるような気がするんです。赤ちゃんっていうより、子猫から見た人間ぐらいじゃないでしょうか。

もうひとつは、子供を生んだばかりのお母さんの顔にはみえないんです。ちっともうれしそうじゃないし。全く喜びが感じられません。俺が見たときは、これは病人か? と思いました。(出産で苦しんだ直後の脱力感、て感じでもなかったなあ) さらに、赤ちゃんの視線で見るというなら、もうちょっと包み込まれるような没入感がないと、理解できないと思います。

こんな感じです。ほかは、なるほど素敵だというものもあれば意味不明なものもありました。石原発言を批判するかたは、1500円払って実際にご覧になったらいいと思います、って、こう言わせるのが石原発言とフランスの新聞の真意じゃないかとかんぐりたくもなりますが。さすが政治家ですね。

あと、この財団は、あえて年寄りに批判されるような作品を選んでいるような気もします。(松井えり菜とか) 「年寄りが批判するのがほめ言葉」なんだと、事前に財団の人と談笑しながら盛り上がった可能性も無きにしも非ず、とも感じました。

追記:

分かる人むけの面白くない展覧会だから罵倒されてしかるべき、的な意見でした。

http://d.hatena.ne.jp/j0hn/20060501/1146436536

(http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=6430519&comm_id=858137 より)

面白くない展覧会だなんて一言も書いてないし、思ってもいません。(どこを読んでそう思ったんだろう) この記事の主旨はタイトルのとおり「石原都知事の発言を批判している人は1500円払って展覧会を見ているのだろうか?」ということで、それ以上でも以下でもありません。 (Tokyo Art Beatでもオススメボタン押して投票してあるし。。。)