経済成長とアート

山形浩生さんがナムジュン・パイクの作品『風呂敷天下』を捨てた話。

……それと今回感じたのは、やはりかれも、かなりの経済発展をとげてソウルオリンピックをやった頃の韓国の経済が背景になければ出てこれなかったんだろうな、ということ。アートもしょせんは経済のあだ花でしかないのう。

Irresponsible Rumors 2007年後半

俺は、ナム・ジュン・パイク氏といったら、ほとんど名前しか知らないし、経済の専門家でもないので山形さんの説が正しいのかどうかはわからないけど「アートも経済のあだ花」っていうのは興味深い表現。

ちょっと調べてみた感じだとこの作品が作られたのは1984年。ちなみに作品の中身はこんな感じらしい。

i.風呂敷天下、というタイトルの3部作でした。
  I.グッド・モーニング・ミスター・オーエル 38分 NY-Parisの衛星中継。
  II.バイ-バイ キップリング         28分 ソウル・東京の衛星中継。(未見)
  III.ラップ・アラウンド・ザ・ワールド     45分 世界のTV局を結ぶ。(未見)
ii.Iの詳細は、オープニングはローリー・アンダーソンピーター・ガブリエル(先日のトリノ・オリンピックの開会式ではジョンレノンのイマジンを歌ってました)のパフォーマンス、フランスのミュージシャン、サッフオーの演奏。ジョン・ケージの演奏シーン、Phillip Grassの楽曲に合わせてのビデオ・コラージュ(これが美しい!)、ダリのインタヴュー(迫力が違います御大)、アルゼンチン・タンゴの革命児ピアソラのパフォーマンス、80年代POPファンには懐かしいトンプソン・ツインズ(私もライブ行きました)の演奏シーン、ムアマン(相変わらず美しい!)のTV チェロ、イブ・モンタンのタップ、アレン・ギンズバーグのヘンテコな歌(なんかウケました)、それに被さるパリのスタジオでのヨーゼフ・ボイスと白装束パフォーマンス軍団アーバン・サックスの演奏、作為的なヴィデオ・ノイズ・・・。

Nam June Paik | FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

字面で見るだけだと、古臭い感じが逆に新鮮っぽく感じられそうな気もするけど。

で、韓国の経済について適当にググって見たら("Korean economic growth"で画像検索してみたら)こんなグラフが。

この作品が作られた80年代、韓国の経済が急成長しはじめたらしいことがわかる。

今で言うなら、中国とインドがまさに経済が急成長して同時にアートも注目されてるってことで、これと同じ構図になっているような感じ。

この「新興国の経済とアート」の関係を敷衍して「経済とアート」の関係を一般化して語ることはできるだろうか。

例えばピカソがアフリカのアートに触発されて色々作品作って、それがいまだに高値で取引されているって話と、欧州がアフリカを搾取した歴史の関係とか。

20世紀の100年の間に経済の中心が欧州からアメリカに移った(のかどうか、よくしらんけど、印象で言うとそんな感じ) それと同時に最先端の芸術の中心地も欧州からアメリカに。……移ってるのかな?

この両者の関係が「経済が主」、「アートが従」なら、まさに「アートは経済のあだ花」だと言えるけど、これは「重要な芸術作品・芸術家」を作品の値段の高い安いで判断するからこうなるんだろうか? それとも豊かな国では芸術家が暮らしやすいってことだろうか。

でもそういう意味では、Wikipediaのナムジュン・パイクの項を見る限り、ナムジュン・パイク氏は60年代にアメリカに移住した韓国系アメリカ人って書いてあるから、韓国の経済は関係なさそうだけど。(経済というより、経済を背景とした政治的プレゼンスとかのほうが関係あるのかな)