雨宮庸介 ムチウチニューロン展・ 竹村京 Apart a part展、トーキョーワンダーサイト・渋谷

ひさしぶりに面白いものを見たのでメモ。

渋谷のトーキョーワンダーサイトで開催中の二人展。

渋谷のワンダーサイトは、公園通り側の入り口から入ると、左手に、螺旋階段があって、一部二階建てになってる空間があり、右手には窓のない部屋が二室(大きい部屋と小さい部屋が)ある。

今回の展覧会では左手の螺旋階段側の空間が竹村京、右手の窓のない二室が雨宮庸介の会場になっている。

竹村京の作品は、トレーシングペーパーに描かれた誰かの部屋。部屋のまんなかにピアノ。なんか、女性がピアノの前に腰掛けて、ポロロン、ポロロン、と弾いていたような気がするんだけど、あれは作家さんもしくは関係者?

その他、刺繍を施した絹の布がいろんな小物をくるんでいる。繊細、かつ、上品。どこか難解な近寄り難さも、ほんのり感じられる作品群。どっかでみたなあ、と思って今調べてみたら、去年、Taka Ishii Gallery で見た方であった。

どういう意味がある作品なのか、ハッキリいってよくわからないが、やわらかな布と刺繍の繊細な質感が、がさつで無神経な現代社会をオブラートに包んでいるかのような、(違うかな?) どこか、あく抜きされたホワイトアスパラガスのような居心地のよさを感じさせる空間であった。

で、面白かったのが、もうひとつの、窓のない部屋のほうでやっていた雨宮庸介展。

まず、入り口が狭い。いつもは、ふつうの扉があるところに板が張られ、入り口の扉がやけに狭くなっている。

(以下、ネタバレというか、どんな作品なのか書いていきますので、そういうのを読みたくない人は注意)

なんだか面倒くさそうだなあ、と思いつつ、扉を開け、体を斜めにして入ってみるとナント、部屋の内側から見ると、入り口がロッカー(更衣室とかにある縦長のロッカー)になっている。

つまり、部屋の中から見ていると、俺がロッカーの中から唐突に出てきたように見える仕掛け。出るときは当然ロッカーの中に入っていくような格好になる。

で、二室あるうちの、奥の狭いほうの部屋の作品は、たぶん、これ↓と同じもの。

鏡のような感じでディスプレイを壁にかけ、そこに室内の映像を(当然鏡像にして)流すと。

見てるほうとしては、鏡のような感じに見えるが俺の姿は映っておらず、その代わりに、いろんなドラマのようなものが映像でそこに展開していく。見ていくうちに「ほー、この空間でこんな出来事が起こっていたのかー」みたいな臨場感を感じることができる。

単純な仕掛けだが面白い。で、その映像に見入っていると、隣の部屋でなにやら物音が。

隣の部屋(入り口を入ってすぐの大きな部屋のほう)にも、壁に(鏡のような)映像が流されているんだけど、その部屋に変な人がいます。

上半身裸で水泳のゴーグルをつけたお兄ちゃんが。

で、壁の映像と微妙にシンクロしながら、床にりんごを転がしたり、寝そべったり、シャツを着たり脱いだり、ロッカーに入ったり出たり、花の茎にバケツの水をつけて、床に転がったりんごの周りを丸く括ったり、それを見ている俺の足元も、丸くくくって結界のようなものを張られ、りんごの丸と俺の足元の丸を花の茎でなぞったりしている。

このお兄ちゃんはいったい誰なんだろう? (雨宮氏?)

日曜の昼前だというのに、観客は俺ともう一人しかおらず、俺はもちろん誰かにパフォーマンスやってくれ、と頼んだわけでもないのに、このお兄ちゃんは一体、何してるんだろう? ……と、頭の中が「?????」になってしまった。

普通の感覚で言えば、ウェブサイトなどで「日曜日は随時、作家本人がパフォーマンスしております」的な告知をするところだと思うが、それをやってないように見える(実際俺ともう一人しか見てなかったし) ということは、人に見てもらうことはプライマリーの目的ではなかった、のだと判断せざるを得ないが、なんというか、渋谷のど真ん中、公園通りに出ると大勢の人が行きかっている日曜の昼前に、なんともシュールなパフォーマンスを見てしまったという感じ。

雨宮庸介というと、とろけたりんごのオブジェしか知らなかったので、事前にしつらえてあったインスタレーションと共に、この奇妙なパフォーマンスを見て、新鮮な驚きがあった。

ただ、新鮮なのはいいのだが、これが彼の表現を世間に伝える一番効率のいい方法なのかというと、よくわからない。彼の作品が、何十万、何百万人の人達、世界中の多くの人達に鑑賞されたときに、安直に消費されて終わらないだけの強さがあるのかどうかはわからないが、とにかく、もっと大きな舞台で多くの人に見てもらう価値があるのは確か、であるように感じられた。

ゴーグルのお兄ちゃんが出演する時間はわかりません。見に行っても誰もいないこともあると思われますので念のため。8月31日まで。

雨宮庸介 + 竹村京 展
会場: トーキョーワンダーサイト・渋谷
スケジュール: 2008年06月28日 〜 2008年08月31日
住所: 〒150-0041 東京都渋谷区神南1-19-8
電話: 03-3463-0603