ハウルの動く城は宮崎流ファンタジー・トレンディードラマだ

ハウルの動く城 [DVD]

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21世紀の東京。ここに、いまいちイケてない女の子がいたとして。ファッションもお化粧も明らかに地味目だったりして。「だってあたしなんか、カワイクないし、男に色目使っても……」みたいな。

そんな子に、偶然彼氏ができて。そいつの家にいってみると、びっくりするほどキッタナイ部屋だったりするので、ついついお掃除してあげたりする。掃除するのは本当は愛情表現なんだけど、「なぜかお掃除おばさんをしてあげている」という設定。なぜって、部屋を掃除してあげた男に振られたら傷つくから。

当の彼氏は仕事が忙しいらしく、帰るのは遅く、ひどく疲れて飯を食うまもなく風呂→寝る、の毎日。なぜあたしのことをかまってくれないのかしら。それはあたしが彼にとって、ただのお掃除おばあさんだからなの、と。まあありがちな半同棲カップルですな。

ここで彼女の妄想が大爆発。実は彼は物凄いイケメン(声はキムタク)、魔法使いの王子様で、仕事は何やってるのかよくわからないけど、夜な夜な鳥に変身して宙を舞って戦争に介入して世界を平和にしようとしてるの。それを理解してあげられるのはあたしだけなのよーと。

なんじゃそれ、君頭大丈夫? って感じですが、関係も深まり、そろそろ将来の話など……という段階で気になってくるのが「家」。賃貸じゃー、ちょっとねーみたいな話もでてきたりして。 (賃貸住宅 + 引越し屋 = 動く城)

仕事では、超美麗ガラス張りオフィスの女性上司(策士で一見冷酷なんだけど、ラストではいい感じのキャラに)とか、ライバル企業との企業間「争い」なんぞも絡みつつ、昔の「トレンディードラマ」っぽい展開に。

ラストでは、脇役のカカシ君との浮気話なんかも、ちょっとでたりしつつも、ハッピーエンドに。なぜか彼のお母さんも引き取ることになり、そこはちょっと想定外だけど、彼と幸せな家庭を築けるんならそれでハッピーなんだと。

うんうん、結構結構、な、ジブリ風味のベッタベタ80年代トレンディードラマですなこれは。

ストーリーが破綻している云々という批判が多いようだが、宮崎駿が昔話をいじくって物語を作ったと考えるから破綻が気になるわけで。昔話を援用して現実世界を描写していると考えれば「破綻している」のはむしろ現実のほうなんじゃないかなと。(理不尽で支離滅裂なところは現実世界そっくり。例えば荒れ地の魔女(姑)に対するソフィの態度の変化など)

むしろ気になるのは「ハウルは本当にイケメンなのか」というところで。実は彼も彼女もかなりのしょぼくれダサダサカップルのくせして「君キレイだよ!!」「あなたイケメンね!!」と「ファンタジー」を維持する努力をしているありさまを描写しているのだとしたら宮崎駿はイジワルだなあと、気が滅入ってくるのである。