TASCHEN:「Collecting Contemporary」現代アート収集家のための入門書
- 作者: Adam Lindeman
- 出版社/メーカー: Taschen America Llc
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: Vinyl Bound
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4900円もした。高い本。紀伊國屋で立ち読みして、思わず衝動買いしてしまった。
Amazonで洋書として買うと、3671円でかえるみたい。
世界のコンテンポラリー・アート関係者40人のインタビュー集。
登場するのは、画商、アートコンサルタント、コレクター、オークション会社の人、美術館関係者。
売り手、買い手、そのあいだで作品の評価に関わる人たちの、三者に意見を聞いている。
作家にはインタビューしていない。これについて著者は、こんなふうに説明している。
I always like to meet and get to know the artist whose work I am collecting; the fact is, though, I don't believe it does any good. After all, the work is what we are after. The work must speak for itself.
コレクションしている作家さんと知り合いになるのは楽しいのですが、それが特に、(作品の蒐集に)「よいこと」になるとは思いません。結局、作品自体が意味を持つのです。
そして、「作家さんは、自分の作品のことを、これは良いとか悪いとか言うが、例えば、クーンズが自身の作品『Bunny』の重要性について(制作時に)どの程度理解していたかというと、それは疑問だ」などと書いている。なるほど、そうかもしれない。
メインのインタビューでは、40人のそれぞれに一問一答形式で、様々な質問をしている。
例えば、画商であれば、
- 画商になった経緯 (On becoming art dealers)
- 最近、3年から5年くらいの、アートマーケットの流行、その変化 (Trends and changes in the art market over the past three to five years)
- 良いコレクターになるには (What makes a great collector)
- 投資としてのアートについて (Art as an investment)
- アートの価値について (Value of art)
- コレクションをはじめる(にあたってすべきこと) (Getting started as a new collector)
- 良い買い物とは (A good buy)
などといったテーマについて、それぞれの画商が考えを述べている。
これはあくまで売り手の意見なわけだが、同様に、買い手のコレクター、評価を定める立場の美術館関係者・オークション会社の人にもいろいろと聞いている。
……というわけで、この本は、これからコンテンポラリーアートを蒐集しようとしている人にとって、とても勉強になる情報が満載されている、興味深い本だといえる。(まあ、数千円でも高くない内容、といえなくもない)
とはいっても、何か特別な「秘密」が書いてあるわけではなく、「いかにもこんなこといいそうだよなあ」という話が多い。(美術館に作品を寄付すると税金が控除になるとかなんとか、色々面白い話も多いが)
挿絵も豊富で、いろんな作品が見られるのも楽しい。(画商のインタビューページにのってんのは、そこで扱ってる作家さんの作品なんだと思うけど)
日本人では、村上隆、森万里子。やっぱり村上隆は評価されているんだなあって感じ。(著者自身が村上作品を持っていて、村上に目をつけてから、購入して、評価が高まるまでの一連の話を書いている)
複数回紹介されていて印象に残ったのは、
- Lisa Yuskavage
- Damien Hirst (羊の剥製のような作品です)
など。(俺は、見て特に何か感動したわけではないが) 有名な人なんだろうな。全然知らなかった。
個人的に「こりゃー不思議!!」と印象に残った作品としては、
Richard Prince "A Nurse Involved"
「involvedってなにに関係しちゃったんだろ!!」と思って色々検索してみたら、この画家さんは、最近は看護婦さんの絵ばかり描いているらしい。 Sonic Youthのアルバムのジャケットも描いている有名な人みたい。
Martin Eder "Die Braut des Pierrot"ってのも面白い絵。
西洋の人はこういう感じの色使いがすきなんだろうか?
Martin Kippenbergerって人の絵も面白い。なんか変な絵。
やっぱり西洋の現代美術は色々歴史があるせいか、奥行きがあって楽しい。(日本にいる日本人がこういう芸術品蒐集するのは、どうなんだろ? という気は、ちょっとするけど)
ただ、画商も、コレクターも、全体的に、なんかうさんくさい、あやしげな感じもした。なんでだろう?
インタビューのなかで、アート蒐集を子供の野球カード蒐集になぞらえて語ってた人がいたけど、たぶん集める動機はどちらもまったく同じ。それが、アート蒐集のほうはいい年した大人のやることだから、売るほうも買うほうも(無駄に)カッコウつけとかなきゃ、って思っていたりするのかも。(それも『無意識』のうちに)
「ハイカルチャー」って言葉の格好悪さにも通じるような感じ。これもきっと「空気論」なんかに関係した話で、こういうのを格好いいとおもってる人は格好いいと思うんだろうな。で、「これを理解できない人は子供だ」とかなんとか思ったりすると。
TASCHENの解説ページには、内容の一部抜粋の立ち読みコーナーもある。メディアで紹介された記事も載ってるんだけど、ヨーロッパ・アメリカでは、それなりに、いろんなメディアの書評欄で紹介されているみたいだ。