素描する人々 - 或る日の洋画研究所、目黒区美術館

いつも楽しく拝見している「Paseo de los museos」さんにて、「これすごいです」と紹介されていた、目黒区美術館の「素描(デッサン)する人々」展に行ってきた。

明治の洋画家浅井忠が設立した「聖護院洋画研究所」(のちの「関西美術院」)で勉強していた画学生の描いたデッサンの展示。

http://www.mmat.jp/event/sobyo/press.htm (目黒区美術館のページ)

安井曾太郎、その他の画家が若い頃、勉強のために描いたデッサンを見ることができる。

非常に面白い展覧会だった。

同じモデルを描いた何点かのデッサンを、並べて一度に見ることができる。

そうすると、

モデルのまわりを何人かの「画家の卵」がとりかこんでデッサンしている様子を想像できる

モデルさんを描いたデッサンであると同時に、それが何点か集まることで、「絵を勉強している様子」を描いた表現にもなっている。

一部は、教えるために先生が横に加筆したようなものや、やる気が出なくて落書きして遊んでしまったようなものあって、これも面白い。

描き手によって、どんなふうに描き方が違うかを見ることができる

ふだん、絵を見るときには、例えば、画家 X が、モデル A を描いたものを見ると、「なるほどこれは画家 X らしい絵だ」などと、納得した気になってみてしまう。

が。

本当の「画家 X らしさ」を知るには、同じモデル A を、画家 Y、 画家 Zにも描いてもらって、それらを並べて比較しないと、本当の「画家 X らしさ」がわからないのではないか。

という屁理屈は、たぶん正しいのではないか。と、思えてくる。

同じ人の顔が、描く人によって全然違う。その違いを見ると、色々と考えてしまう。(描き手の気持ちが「投影」されているのだろうか? とか)

明治時代の「ふつうの人」がモデルになっているので、そのころの人の様子をみることができる

女性のモデルなんかだと、ヘアスタイルが普通に明治時代っぽくなっていて、面白い。「あーこういう人が普通に道歩いてたんだろうなー」と思うと、感慨深い。

いろんな角度から一人のモデルを描いているので、まるで彫刻を見ているかのような気分になる

同じモデルをいろんな角度から描いているので、とても立体的に見えてくる。この感覚は面白かった。

あと、一部の作品は、保存状態が悪かったのか(それとも意図的なのか、よくわからないけど) 紙全体に、しみがあって、描いた部分が部分的に剥げ落ちて、まるで「点描のデッサン」のような感じになっていたのも面白かった。

とても、楽しい展覧会でした。Paseo de los museosのMuseoさん、どうもありがとう。

「素描(デッサン)する人々」展』
会場: 目黒区美術館
スケジュール: 2006年10月14日 〜 2006年12月03日
住所: 〒153-0063 目黒区目黒2-4-36
電話: 03-3714-1201 ファックス: 03-3715-9328