老化防止ゲート

色々紹介したいイベントがあるんだけど、まずこれから。

日本科学未来館の7Fで明日まで。入場無料(チケット不要)

いま、日本科学未来館デバイスアート展 という展覧会をやっていて(これも明日まで) それといっしょに開かれているのが interactive tokyo 2007というイベントと、このバーチャルリアリティコンテスト。

全部無料で、なんというか、全部似たような展覧会。

ほとんど全ての展示物に

  • 加速度センサー
  • アクチュエーター
  • プロジェクター
  • パソコン

……のどれか(ものによっては全部)が使用されている、といった感じ。

これらの展示物のほとんどは工学系・情報系のメガネ君(俺っぽい)が作ったモノで、製作者がいるブースでは、ハイテンションのメガネ君が声を裏返しつつ作品を解説してくれる。なかにはICCで見たことあるような気がする展示物もあった。

……のだが、そのなかで唯一(?)美術系大学から出品されていた作品が東京藝大油絵科のかたが制作した「老化防止ゲート」というもの。(追記: よくみてみると、IAMASも芸術系大学だった)

ちなみにこのページにでている写真は老化防止ゲートの写真ではなく、以前制作した作品らしい。(会場にはちゃんと作品ファイルも置いてあった。さすが「美系」は理系とは違う) どうでもいいんだけど、この写真、クリックすると物凄く大きく拡大できる。

で、この老化防止ゲートなんだけど、空港の保安検査場などにある金属探知ゲートを模したつくりになっている。

そのゲートを人がくぐると上部の赤色回転灯が点灯する。で、その瞬間、ゲートから化粧水が霧状に噴霧され、それが顔にかかる、というもの。化粧水がかかった瞬間、お肌は潤い、(理論上)老化が一瞬とまる。つまり、この時ゲートを通る人の「時間が一瞬止まった」のと同じ効果が(お肌に)得られるという装置。

この作品を作られた方は人間の老化に関心があって、不老不死の研究(正確に言うと老化の研究)をしていきたいと考えておられるのだそうだ。

俺は、個人的な考えを言わせてもらえば不老不死なんて実にばかげた考えだと思っていて、むしろ逆に、suicide booth (公衆自殺機)のようなもののほうが欲しいタイプではあるんだけど、それはともかく、作品自体の面白さと、これがバーチャルリアリティコンテストに出品される、という舞台装置の面白さ、二重の面白さがこの作品からは感じられた。

一般的にバーチャルリアリティという言葉から連想されるのは電子的な仮想空間を触覚や視覚を通して感じることで新しい世界を作り出す、といったようなものだと思うが、この老化防止ゲートも「時間を止める」体験ができる、という点で、確かに仮想の世界を体験できる装置になっている。

一方、技術的には、人がゲートを通過することを感知するセンサーと、化粧水を噴霧する機構のみから構成されている単純な作品だと想像されるが、それがかえって他のほとんどの作品の「無個性」ぶりを浮かび上がらせているように感じられる。

バーチャルリアリティ→イコール→センサーによる入力、アクチュエーターやプロジェクターによる出力、それをコンピュータを使って作り出した仮想世界とつなげてシステムを構成する、という短絡思考。

そういった、「はじめに技術ありき」で目的不在の「手段から作り始める」思想とは根本的に違う、「目的優先」つまり不老不死の体験(の第一歩)ができる、という抽象度の高い体験をもたらす装置の提案ということで、むしろ、他の多くの作品よりも「高度」な作品だと感じた。

このかたの作品ファイルを拝見したところ、ほかにも、寝相が悪いのを矯正するベッド(寝顔が変にならないように、寝たまま顔がみえるように鏡が付いている、って、鏡があっても自分で寝顔は見られないと思うけど) とか、にきび顔をモチーフにしたマスク状立体作品(草間彌生風の質感) など、「コスメ系」の芸術作品を専門に手がけてらっしゃる様子。

今後の展開に期待したい。