フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展

先月末(はじまってすぐ)に行って見てきた。

行く前に見た、このページ↓が面白かった。

ここに書いてあることを要約すると

  • フェルメールは、絵の対価として、そのころの賃金労働者の平均年収の1.5倍の額をもらっていた。(現在の日本で言うなら600万前後くらいってことか?)
  • フェルメールが好んで使ったウルトラマリンという顔料はラピスラズリという宝石を使った高価な顔料である
  • 「牛乳を注ぐ女」に描かれている壷から流れ出る牛乳は、(帯状にのっぺりと描かれているのではなく)らせん状に描かれている
  • 「牛乳を注ぐ女」に描かれているパンやかごは、ポワンティエと呼ばれる、明るい点描で表現する技法で描かれている
  • 当時の風俗画には風刺や教訓的な意味が込められていた
  • しかしフェルメールの絵からはそういった風刺や教訓的な意味は読み取れない

といったことが書かれている。

しかし、展覧会では、残念なことに流れ出る牛乳や、パンやかごの描き方については(俺の視力では)観察できなかった。立ち入り禁止の柵が絵から2mぐらいのところにあって、あまり絵に近づけないのだ。こちら↓で青い日記帳さんが書かれている通り、オペラグラスを持参したほうがいいと思う。

この風俗画っていうのは一体何なんだろう。昔の貴重な絵だと思ってみると(みんなが凄いというので)凄そうな気がするけど、俺が17世紀に生きていたら、お手伝いさんの絵に、当時の平均年収以上の価値を見出すことができるだろうか? と思ってしまった。(ほかの、台所の絵とか酔っ払いの絵とかも、当時はいくらしたんだろう、という感じ)

これは現代の感覚で言うと、写真での表現に近いだろうか? 一昨年見た、ドイツ写真の現在展でみた、なんてことない感じの風景をちょっと思い出したんだけど、欧州の現代の写真と17世紀オランダの風俗画は、どこかでつながっていたりするのだろうか。

「牛乳を注ぐ女」の展示の先には、描かれた部屋を実物大建築模型で再現してるコーナーがあるんだけど、これをみると、これはお手伝いさんの絵というより、背景の光のやわらかい感じを描いた絵なのかな、という気がしてくる。

「光の画家」というと凄そうだけど、俺が17世紀の庶民だったら「壁にあたった光を見るだけならタダだよ!」とか言い出しそうだ。

あと、こないだ日本科学未来館ミュージアムショップで「岩絵の具 手作りキット」ってのを買ってきて(面倒くさくてまだ開けてないんだけど) このキットには「群青色」の元としてラピスラズリが入ってるらしいんだけど、ウルトラマリンってのはそんなに高価な色なんだろうか。

展覧会の帰りには、六本木ヒルズのツタヤで「もっと知りたいフェルメール (もっと知りたいシリーズ)|東京美術」という本を買った。薄い割りに詳しくて勉強になった。